
Q1.0(キューワン)住宅は、断熱・気密を徹底的に高め、ごく少ないエネルギーで家じゅうを均一に暖める高性能住宅。日本の気候と暮らしに合わせて、新住協と鎌田紀彦氏が体系化しました。
全国の工務店・設計事務所・研究者が集まり、高断熱・高気密住宅の技術を公開・共有する研究組織。室蘭工業大学名誉教授・鎌田紀彦氏を中心に、北海道の厳しい冬で磨かれた知見を体系化してきました。
家工房は会員として、新住協の設計手法に基づくQ1.0住宅の設計・施工を行っています。
1980年代から日本の寒冷地で蓄積されてきた高断熱・高気密の技術を、誰もが再現できる設計手法としてまとめ上げたもの。北海道の厳しい冬で磨かれた知見が土台になっています。
国の省エネ基準で建てた住宅に比べ、暖房に必要なエネルギーを半分以下に抑えることを目標にした、高断熱・高気密住宅のこと。少ないエネルギーで、家のどこにいても暖かい——その状態を「設計」でつくり出します。
鍵を握るのが Q値(熱損失係数)。家からどれだけ熱が逃げるかを表す数値で、小さいほど熱が逃げにくい=暖かい家です。「Q1.0」という名前は、その熱の逃げにくさを極限まで高めるという思想そのものを表しています。パッシブデザインとパッシブハウスの違い →
Q1.0住宅の性能は、特別な装置ではなく、「エコハウスの5要素」の積み重ねでつくられます。それぞれの要素は解説ページをご覧ください。
パッシブハウスが世界共通の「絶対基準」で認定されるのに対し、Q1.0住宅は日本の地域ごとの気候に合わせて「到達しやすい高性能」を設計する手法です。コストと性能のバランスをとりながら、その土地に最適な暖かさを目指します。
CASE STUDY · 3つの家の計算シート
家工房では、設計する家ごとに新住協の計算ソフト「QPEX」で Q値・UA値・暖房負荷を計算し、お客様に結果シートをお渡ししています。ここでは、実際に計算した3つの家のシートを並べて、数字の読み方と、家によって何が違うのかを解説します。
※どれも設計時の計算値で、実測値ではありません。暖房負荷は「家じゅうを20℃に保つのに必要な熱の量」です。
| 上野自邸 (断熱改修) | 中居林の平屋のような家 (新築) | 五戸 改修前 (仮に無断熱) | 五戸 改修後 (改修部分のみ) | |
|---|---|---|---|---|
| Q値 [W/㎡K] | 0.59 | 0.76 | 11.12 | 1.46 |
| UA値 [W/㎡K] | 0.16 | 0.23 | 2.96 | 0.36 |
| 暖房負荷 [kWh/㎡・年] | 8.8 | 18.9 | 648.3 | 63.5 |
| 省エネ基準の家に対して | 9.3% | 20.9% | 717.9% | 70.3% |
| Q1.0住宅の判定 | Level-4 | Level-3 | 省エネ基準レベル未達 | 省エネ基準レベル |

築年数のたった家を、外壁に235mmの付加断熱(室内側にも45mm)、天井にセルローズファイバーと高性能グラスウール計500mm、トリプルガラスの樹脂窓、熱交換換気で改修しました。暖房負荷は省エネ基準の家の約9%、Q1.0住宅のいちばん上の Level-4 です。
シートを見ると、冷房負荷(717kWh)が暖房負荷(1,030kWh)に近いことにも気づきます。ここまで断熱すると、冬でも晴れた日は日射で室温が上がりすぎることがあります。実際、自邸では真冬でも晴れた日中は窓を開けて調整しています。性能を上げるほど、日射の取り入れ方と逃がし方の設計が大事になります。
自邸は現在、パッシブハウスの改修版「EnerPHit」の認定を目指しています。室温・湿度の実測ログも公開しています。→ 自邸について

新築では、最初から付加断熱(105mm+105mm)、屋根の吹込みグラスウール400mm、日射取得型のトリプルガラス窓(YKK AP APW430)を組み合わせられます。暖房負荷は省エネ基準の家の約21%、Level-3 です。
燃費の欄を見ると、エアコン暖房で暖冷房あわせて年6万円ほど(家じゅう20℃・電気代30円/kWhの試算)。同じ家を省エネ基準の仕様で建てると、暖房の熱だけで約4.8倍かかる計算です。→ 中居林の平屋のような家
家全体ではなく、よく使う部屋のまわり(約84㎡)だけを断熱改修した例です。改修後の判定は「省エネ基準レベル」で、Q1.0住宅のレベルには届いていません。理由ははっきりしていて、
という、改修ならではの制約があるからです。レベル判定は「同じ家を省エネ基準の仕様にした場合」との比較なので、こうした制約はそのまま評価の低さに出ます。
ただし、比べるべき相手は改修前の家です。同じ部分を仮に無断熱・アルミ単板窓・すき間の多い状態として計算すると、暖房負荷は 648kWh/㎡、改修後は 63.5kWh/㎡。必要な暖房の熱はおよそ10分の1になります。
もちろん、無断熱の家で家じゅうを20℃に保つ人はいません。実際は一部屋だけを暖めて、廊下やトイレの寒さは我慢しているはずです。なので光熱費の差はこの計算の10倍そのままにはなりませんが、光熱費は大きく下がり、そのうえ改修した範囲は家じゅう暖かくなります。予算や工期に限りがあっても、断熱改修の効果は十分に大きいことが分かります。→ 五戸町のスポット断熱リノベ
※改修前は「断熱材なし・アルミサッシ単板ガラス・熱回収なし・相当すき間面積10c㎡/㎡」と仮定した試算です。外壁の空気層の効果は見込んでいません。
家の性能を表す計算には、いくつかの種類があります。同じ家でも、どの計算を使うかで見え方が変わります。
確認申請や補助金、長期優良住宅などで使う計算です。基準に合っているかを確かめるには必要ですが、「暖かい家かどうか」を判断する物差しとしては、次のような弱点があります。
| 国の省エネ計算 | QPEX(新住協) | PHPP(PHI) | |
|---|---|---|---|
| 主な数字 | UA値・ηAC値・一次エネルギー | Q値・暖房負荷・Q1.0レベル | 暖房/冷房需要・PER・オーバーヒート頻度 |
| 換気・すき間 | UA値には入らない | 入る | 入る(気密は実測で確認) |
| 暖房の前提 | 主に居室を暖める標準的な暮らし方 | 家じゅう20℃ | 家じゅう20℃ |
| 日射 | ηAH・ηAC(冬の日射に基準なし) | 月ごとに計算 | 月ごと、庇や周辺の影まで |
| 熱橋 | 簡易 | 簡易(面積の割合) | 部位ごとに計算 |
| 向いている使い方 | 申請・基準への適合 | 設計中の比較・お客様への説明 | 認定・詳しい性能確認 |
※おおまかな比較です。それぞれの計算の細かな条件は、各制度・ツールの資料をご覧ください。
家工房では、国の計算で基準への適合を確かめつつ、設計はQPEXで「家じゅうがどれくらい暖かく、どれくらいの暖房で済むか」を見ながら進めます。→ パッシブデザインとパッシブハウスの違い